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TPPで日本は世界一の農業大国になる

浅川芳裕


価格 : ¥864 (税込み)

 来るべきTPP締結の日。その日は刻々と近づき、全国が賛成派と反対派に色分けされているようである。とくに農業は、当事者以上に国会議員などが大きく旗を振っている。
 そんななか、あくまで農業従事者の目線でTPPを語っている本書は、貴重な一冊だ。著者は言う。「日本の総世帯5000万のうち、農業の所得がメインの家族は40万世帯。わずか0.8%である。農産物売上が1000万円以上の経営者層に限れば14万、0.3%が国民の購買・消費する国産食料の60%超を生産・販売している。日本の3分の1が農家世帯であった1960年代と比べれば、100分の1だ。一方、農家の総生産額は現在、2兆円だった当時の4倍、8兆円を超える。つまり、単純計算で約300倍の能率向上を実現済みだ」と。
 つまり、すでに農家は先を見越し、先行投資をし、経営体質の強化も済ませているというのだ。マスコミは農家の古い体質を執拗に取り上げるが、いまや農家は現代ニッポンにおいて、選りすぐりの超少数派・超エリート集団とも。
 
「前近代の尺度で農業や食料問題を我が物顔で語り、TPPがやってきたからと彼らの未来を絶望視する農水省や農協、評論家の言動は罪」、「農業経営者をなめてはいけない」という主張を徹底的に検証した本書は、TPP賛成派、反対派ともに必読の書であることは間違いない。



【目次】
序章 TPPは世界一への前提条件 
  TPP構想は、日本が先導してきたという事実
  さらに進む環太平洋連帯構想
  ぶれ始めた日本の方針
  ようやく再始動した「TPP参加」への動き
  「貿易自由化」の意味とは
  低い日本の自由化率
  日本にとって「歓迎すべき流れ」
  農業交渉は負ければ負けるほど“勝ち戦”

第1章 反TPP論のウソを暴く
01国産米の9割が外米に置き換わる? 
  日本のコメが消えるという「不思議」
  農水省試算のカラクリ
  極めて小さい短粒種の市場シェア
  米国で中・短粒種の栽培が広がらない理由
02日本農業は壊滅する?
  関税ゼロ=増産できる、という事実
  輸入増加によって国産が増えた牛肉の例
  輸入大豆が和食文化を守っている現実
03小麦が全滅する?
  高関税のせいでハンディを負う日本の食品業界
  小麦粉は「全て外国産に置き換わる」のウソ
  政府補償が農家の成長を阻む
  国産小麦は品質が悪い
04TPPに参加しても日本の農産物輸出は伸びない?
  TPPで生まれる大きな輸出市場
  世界最大の米国市場を狙え
  「アジアの成長を取り込む」など非現実的か?
05TPPは米国の失業対策ではないのか?
  見落とされた新興国の経済成長
  恩恵をこうむるのは米国だけではない
  農産物輸入増が日本にもたらすメリット
06自給率が下がって食料危機の可能性が高まる?
  真の「食料危機」とは
  「相互依存」が支える各国の発展繁栄
07大震災でダメージを受けた農家にさらに打撃を与えるのか
  グローバル製造業である日本農業を支えるには
  今こそ輸入関税と国内規制の緩和が急務
08安い食品の輸入が増えデフレが進む?
  内需拡大のきっかけに

第2章 農業界を蝕む利権構造にメスを入れよ
01農協の利権構造を暴く
  TPP反対運動の実行部隊の正体
  TPP参加は農協にとって損
  自分たちの利益を守るための「TPP反対」
  全国規模の特権組織
  農協の利益に根差した戦略
  地域・農業経済に還元されないしくみ
  農林中金の主要融資先は米国
  農協法を廃止せよ
  集票マシンという顔
  農協を敵にしては選挙に勝てない
02農水省の利権構造を暴く
  職員の失業対策
  自給率壊滅を謳いながら減反をする謎
  社会主義国顔負けの「統制経済」
  減反政策の大義名分のウソ
  日本の農家人口は多すぎる
  決して低くない零細農家の所得
  食料安全保障とは
  意図的に下げられた食料自給率
  農水省が煽る食料危機
  膨らみ続ける自給率向上関連予算
  主食用米は減反強化、飼料米は補助金増の矛盾
  無駄につぎ込まれる税金
  農水省は「輸入商社」である

第3章 日本農業、大躍進へのシナリオ
01日本農業の底力を活かせ
  大きな伸びしろを持つ日本農業
  世界有数の成長産業
  TPP交渉参加国=輸出の有望マーケット
  都市人口が農村人口を上回った中国を狙う
02「輸入の国産転換」シナリオ
  輸入が作り出す国内需要を利用せよ
  さらに広がる国産野菜の市場
03「輸出富農」シナリオ
  世界に通用する高品質を売りに
  海外のバイヤー企業を利用せよ
  海外の日本人をターゲットに
  日本のコメをオーストラリアとEUへ
  さまざまな世界戦略
  輸出を狙える「和の野菜」とは
  農産物を「商品」として売り込むマーケティング
  食肉市場の国際化を急げ
04「技術輸出」シナリオ
  農家が培ってきた「匠の技」は世界で通用する
  自らの強みを存分に活かす機会に
05「世界農場」シナリオ
  海外農場を展開せよ
  香港で展開された食のサービス業
  安売りしない仕組みづくり
  肥沃な大地で日本農業のノウハウを活かす
06「互恵貿易」シナリオ
  戦略的パートナーシップの構築
07「官需市場」シナリオ
  日本の高度な農業土木技術を活かせ
  農業インフラ・ビジネスを輸出する

第4章 農業界のリーダーたちの声
01コメを例外扱いしてはならない!  
  齋藤一志(株式会社庄内こめ工房・代表取締役)
  TPPは農政転換の最後のチャンス
  規模拡大のための政策誘導を
  六次産業化など戯言を言っている場合でない
  「おにぎりショップ」中国・成都に出店
02野菜の輸出はもっともっと増やせる!
  松本 武(有限会社松本農園・取締役)
  輸出輸送費より国内運賃の方が高い
  優良農地確保の戦略と戦術
  無料リサーチで海外需要は創造できる
03農業の力で地方は必ず復活できる!
  栗田義夫(有限会社クリタ園芸・代表取締役)
  コメ減反は世界に対する不義行為
  日本の農家はコスト意識を持て
  日本の果物・野菜は世界を驚かせる
  TPPは農村再生の絶好の機会
04生き残ろうという意思、努力が進歩を生む
  林 邦雄(株式会社林牧場・代表取締役社長)
  関税撤廃は来るべくして来る
  品質安定、コスト低減は経営維持の絶対条件
  経営者として自立できることが最も重要
  販売を成功させるためにもまず経済活性化が急務
05農業改革に取り組む最大の転機に
  木内博一(農事組合法人和郷園・代表理事)
  TPPはWTOの地域グループ・セッション
  日本は農業最適国
  技術も世界最高峰
  海外を目指す農家が集う和郷園のアジアモデル
  農家減少が日本農業を強くする
  リスクマネーと農家資本を組み合わせた成長戦略
  「農家のオヤジはプチ・スーパーマン」
  日本最大のレシピサイト「クックパッド」と提携
  国民に見捨てられる!
  TPP反対の恐ろしさ

第5章 世界一の農業大国になるために
01農家の黒字化政策へ転換せよ
  「鎖国」は日本農業の未来を危うくする
  「農業者戸別黒字化優遇制度」を採り入れよ
  農業補助金削減を参加国に提言せよ
02農地自由化五カ条
  一カ条  特定作物に対する優遇政策を撤廃する
  二カ条  減反政策を完全撤廃する
  三カ条  生産性に応じた農地価格を形成する
  四カ条  農家が抱える土地改良費の債務を帳消しにする
  五カ条  「リタイア農家」「不在地主」の撤退促進策を講じる
03四大農業法・廃止提言
  提言一  農協法の廃止
  提言二  農地法の撤廃・農業委員会の廃止
  提言三  農水省設置法の廃止
  提言四  酒税法、酒蔵免許の廃止
04世界1位の農業大国になるための八策
  第一策  農家による作物別マーケティング組織の設立
  第二策  科学技術に立脚した農業ビジネス振興
  第三策  輸出・輸入・国内検疫体制の強化
  第四策  輸出インフラの整備
  第五策  国際人材の育成・採用強化
  第六策  農家の海外研修制度
  第七策  農場の海外進出支援
  第八策  民間版市民農園の整備
05世界一の農産物輸出国へのカギ
  関税撤廃は必須
  日本の「食」がもつ可能性を広げるチャンス
  輸入規制の弊害は明らか
  「輸出するために輸入する」食産業に足りない2つの自由
 
 
浅川芳裕(あさかわ・よしひろ) 1974年、山口県に生まれる。月刊『農業経営者』副編集長。(株)農業技術通信社・専務取締役。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長、農業総合専門サイト『農業ビジネス』編集長を兼務。著書『日本は世界5位の農業大国』(講談社+α新書)はベストセラーとなり、同書で第2回政策分析ネットワーク賞(シンクタンク賞)を受賞する。その他、著書に『日本の農業が必ず復活する45の理由』(文藝春秋)、共著に『どうなる!日本の景気』(PHP研究所)、『農業で稼ぐ!経済学』(同)がある。

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